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パラボリックフライト@ボルドー(フランス) 1997年9月−10月
パラボリックフライト(放物飛行)・・・これは航空機を使って行われる低重力実験(「無重力」というほどにはGレベルが小さくない)で,水平飛行している航空機の機首を上げ,約45度まで上がった状態でエンジンを停止し,その後放物飛行すなわち自由落下運動させてこの間航空機内に低重力状態を得,様々な実験に利用します.自由落下といっても初速は上向きなので初めは上昇し,頂点に達した後下降します.機首が約45度下に向いた状態になったら再度エンジンを始動し,機首を上げ水平飛行に戻します.1997年9月から10月にかけてフランスのボルドーで行われたパラボリックフライトに参加した時の様子をお知らせします.
使用された航空機.エアバス社のA300で,パラボリックフライトに使用される航空機としては世界最大級です.水平飛行からの機首上げに約20秒かかり,得られる放物飛行時間は約20秒,再度の機首上げに約20秒かかります.このセットを1回の離陸につき30回程度行ったと思います.1日に午前と午後2回ずつ飛び,それを3日間行いました.
機首上げの際には遠心力により約2G(重力の2倍)の力が航空機内の搭乗者にとっては下向きにかかります.航空機はボルドーの空港から離陸し,海まで出てパラボリックフライトを行いました.途中で見えるビーチの人達が楽しそうでした.
まだ準備期間中.客席は取り除かれ,客席の固定されていたレイル上に実験装置が固定されます.壁,床,天井は安全のためクッションで覆われています.手前にあるのが私のグループの使用した実験装置です.複数の燃料液滴の高温高圧雰囲気中での点火の実験を行いました.この航空機の中に15個ほどの実験装置すなわち15グループほどが搭乗します.1グループにつき搭乗者は3名程度です.他にもちろんパイロット,パラボリックフライトを実験者に提供する側のクルー,医療班の人達が搭乗します.
空港からは夕方には追い出されてしまいます.宿舎でできることは限られているので,夜は比較的のんびり過ごしました.
私の同僚達.1人は圧力調整,1人はハイスピードカメラのフィルム交換(当時はアナログ)の担当でした.私は装置のオペレーション担当で,体が浮かないようにシートベルトをして手前の椅子に座り,水平飛行中,機首上げ中,放物飛行中関わらずフルタイムでオペレーションしました.
私の主観ですが,忍耐と手先の器用さの要る作業には日本人が向いているようです.
↑放物飛行中は大人しくしていないといけないはずが,ほとんどの人が構わず飛びまわる.
放物飛行の合間は一息つける時間であると同時に急いで次の準備をしなければならない時間です.真ん中のブロンドの女性は医療班の人です.医療班が必要な理由は・・・ 1G → 2G → 0G → 2G → 1Gの繰り返しが人によっては応えるようで,実験者のうち1/3くらいの人達がやられていました.ちなみに私は大丈夫でした.いくら具合の悪い人が出ても飛行は予定通り続けられ,医療班の人達は介護のためあちこち走り回るというなかなか凄まじい有様でした.

私も最後に一度だけ飛ばせて頂きました.
着陸後,降機するのはいつも私が先頭でした.理由は動物の生理現象のためです.他の人はあまり問題がなかったそうで,人種差でもあるのでしょうか.なお,航空機は1度離陸すると3時間着陸しません.航空機内にはトイレはありません.ペットボトルを使用している人もいましたが・・
そしてトイレへ・・
なお,最終日最後のフライトの際には,脚が出ないというトラブルが発生し,地上には消防車が多数待ち受けていたそうです.幸い我々には着陸後に知らされました.(脚は無事に出ました.)
週末は空港には入れなかったので有効に時間を使っておきました.