Research of Takamatsu_Lab

九州大学大学院工学研究院機械工学部門

○MEMSセンサによる極微量サンプルの熱伝導率測定法

pict1_MEMS.jpg流体の熱輸送性質は,非定常細線加熱法という方法で精確に測定されますが,この方法では20~200 mlの試料を必要とします.そこで,熱伝導率の測定がわずか1ul程度の試料で可能な新しい測定法とそれに用いるMEMSサンサの開発を行っています.考案したセンサを用いると,流体の熱伝導率が極短時間のうちに定常状態で測定できるということも解析によって明らかになっています. (写真は,マイクロビームセンサの概念図)

[主な研究発表]

  • 稲田教介, 田中利幸, 内田悟,高橋厚史, 藤井丕夫, 高松洋,マイクロビームセンサによる極微量液体の熱伝導率測定法に関する解析,熱物性,23(2), 2009(掲載予定).



○赤外光を用いた生体試料の熱輸送性質の非接触測定法

pict2_CO2.jpg凍結手術やハイパーサーミア(温熱療法)など,熱を利用した治療を行う場合には,生体の熱物性値の精確な値を知っておくことが重要です.これまでには,実験動物や取り出した生体組織に温度センサーを穿刺して熱物性値を測定した例がありますが,出血や測定対象に制限があるという問題があります.そこで,試料の表面をレーザで加熱するとともにその表面温度上昇を赤外線温度計で測定して熱伝導率と熱拡散率を求める非接触測定法の研究を行っています. (写真は,熱輸送性質測定実験装置)

[主な研究発表]

  • K. Yoshida, S. Uchida, H. Takamatsu, M. Fujii, Feasibility Study of Noninvasive Measurement of Thermal Conductivity and Thermal Diffusivity for Biological Materials, Proc. ASME-JSME 2007 Thermal Eng. and Summer Heat Transfer Conf., HT2007-32740, 2007.
  • 内田悟,吉田敬介,高松洋,張興,藤井丕夫,生体の熱伝導率,熱拡散率の非侵襲測定法(伝熱モデルと測定精度の検討),日本機械学会論文集(B編),72(723), pp. 2774-2779, 2006.



○固体およびソフトマテリアルの熱輸送性質測定法

赤外光を用いた測定法と同様,非侵襲的に固体の熱伝導率と熱拡散率を求める方法や,生体組織や生体材料,食品といったソフトマテリアルの熱輸送性質を様々な条件下で測定するのに適した方法の研究を行っています.

[主な研究発表]

  • 大和田智希,吉田哲郎,内田悟,高松洋,スタンプ型接触センサによる固体の熱輸送性質の測定に関する解析,第46回日本伝熱シンポジウム,2009(発表予定).


○凍結手術支援を目的としたクライオプローブまわりの生体および模擬生体試料の凍結

pict3_gel.jpgpict3_apparatus.JPG凍結手術は先端のみが冷却されるクライオプローブを組織や臓器に穿刺して,癌などの組織を凍結壊死させる手術法です.この手術を計画する際には,クライオプローブまわりの凍結領域と温度分布を予測することが大きな助けとなります.このために,クライオプローブの冷却特性を実験的に明らかにするとともに,シミュレーションプログラムの開発を行っています.(写真は、左:プローブまわりの凍結実験装置,右:ゼラチンをプローブで凍結させた様子)

[主な研究発表]

  • 安達健二,大和田知希,田中利幸,神村岳,内田悟,高松洋,模擬生体試料のクライオプローブまわりの凍結に関する研究,日本冷凍空調学会年次大会2008.



○細胞の凍結:凍結解凍による細胞損傷とそのメカニズム

pict4_microscope.jpg細胞が凍結解凍過程で損傷する原因が何であるかは,凍結手術や生体の凍結保存の基礎として最も重要な問題であり,低温生物学の分野で研究が行われてきました.本研究室でも,工学的手法を用いて低温生物学の問題にチャレンジしており,これまでに細胞の凍結損傷に及ぼす細胞外の氷の影響と電解質の濃縮の影響を初めて定量的に求めるなどの成果を挙げています.(写真は、低温顕微鏡)

[主な研究発表]

  • H. Takamatsu, Freezing of Cells; Role of Ice and Solutes in Cell Damage (Key Note), Proc. ASME-JSME 2007 Thermal Eng. and Summer Heat Transfer Conf., HT2007-32250, 2007.
  • H. Takamatsu, S. Zawlodzka, Contribution of Extracellular Ice Formation and the Solution Effects to the Freezing Injury of PC-3 Cells Suspended in NaCl Solutions, Cryobiology, 53(1), pp. 1-11, 2006.



○浸透圧変化に対する細胞の応答と損傷

pict5_perfuse.jpgからだの中では電解質の濃度変化に伴う浸透圧ストレスを受ける細胞があります.また,生体の凍結過程でも細胞は浸透圧の上昇に曝され,これが凍結損傷の一因と考えられています.このような浸透圧変化に対する細胞の反応と損傷について,独自の溶液灌流顕微鏡を用いて研究を行っています.これまでに,浸透圧変化のどの段階で細胞が損傷するのか,単離状態と培養状態で細胞の脱水収縮特性が異なるのか,などといった基本的な問題について明らかにしてきました.(写真は,溶液灌流顕微鏡)

[主な研究発表]

  • T. Yoshimori, H. Takamatsu, 3-D measurement of osmotic dehydration of isolated and adhered PC-3 cells, Cryobiology, 58(2), pp. 52-61, 2009.
  • S. Zawlodzka, H. Takamatsu, Osmotic Injury of PC-3 Cells by Hypertonic NaCl Solutions at Temperatures above 0°C, Cryobiology, 50(1), pp. 58-70, 2005.
  • H. Takamatsu, Y. Komori, S. Zawlodzka, M. Fujii, Quantitative Examination of a Perfusion Microscope for the Study of Osmotic Response of Cells, Journal of Biomechanical Engineering, 126(4), pp. 402-409, 2004.



○骨細胞による疲労亀裂のセンシングと骨リモデリング開始メカニズム

FigReseach_K1.jpg生体骨組織の内部には細胞が存在する微小な空間(骨小腔)や血管が無数にあり,これらは材料力学的に応力集中箇所にあたります.反復動作を伴うスポーツ練習等によって特定の骨が繰り返し荷重にさらされると,この応力集中箇所から疲労亀裂が発生・進展し,骨の破壊,つまり骨折へと繋がる恐れがあります.このような骨折を避けるためには,骨組織に生じる微小な疲労亀裂を感知し,骨リモデリング(再構築)によって取り除くメカニズムが存在するだろうと仮説を立て,細胞培養実験系や動物モデルを用いた研究を行っています.その結果,骨内部の骨細胞がメカニカルダメージを受けたとき,破骨細胞様細胞の分化を促進する液性因子を産生して骨リモデリングが開始されるという,骨の健康を維持するためのメカニズムが明らかになりつつあります.(写真は,疲労亀裂を起因とした骨リモデリング開始メカニズムの模式図)

[主な研究発表]

  • K. Kurata, T. J. Heino, H. Higaki, H. K. Väänänen, Bone marrow cell differentiation induced by mechanically damaged osteocytes in 3D gel-embedded culture, Journal of Bone and Mineral Research, 21(4), pp. 616-625, 2006.
  • K. Kurata, T. Fukunaga, J. Matsuda, H. Higaki, Role of mechanically damaged osteocytes in the initial phase of bone remodeling, International Journal of Fatigue, 29(6), pp. 1010-1018, 2007.
  • 藏田耕作,福永鷹信,日垣秀彦,骨細胞と力学応答,運動・物理療法,19(3), pp.184-191, 2008.



○振動刺激を利用した骨の健康維持に関する研究

FigReseach_K2.jpg骨は周囲の力学的環境に応じて形態や強度を変化させます.長期間寝たきりでいると骨粗鬆症になったり,運動すると骨が強くなったりするのは,よい例です.この研究では,機械的な振動刺激を生体に与えたとき,骨が受ける影響について検討しています.その結果,最適な振動周波数や振幅を選べば,骨粗鬆症を発症するはずのマウスにおいて,骨量や骨強度の低下を防止できることが明らかになりました.(写真は,マウス脛骨のマイクロCT像.左:振動なし,右:振動あり)


○培養細胞のその場観察選別回収法の開発

pict6_cellcollects.jpg幹細胞研究などでは多種類の細胞から特定の細胞のみを分離する技術が重要です.一般には蛍光色素等のマーカーで標識された細胞を浮遊状態で流動させながら選別します.これに対して,培養状態を顕微鏡下で観察しながらターゲットの細胞のみをその場で回収する方法の開発を行いました.この方法では,温度応答性の高分子化合物をコーティングしたディッシュに細胞を培養し,狙った細胞直下を冷却してその細胞をマイクロピペットで吸引します.現在では,1つの細胞を約10秒で回収できるようになっています.(写真は,細胞選別回収装置)

[主な研究発表]

  • H. Takamatsu, S. Uchida, T. Matsuda, In situ harvesting of adhered target cells using thermoresponsive substrate under a microscope: Principle and instrumentation, Journal of Biotechnology 134(3-4), pp. 297-304, 2008.


○インピーダンス計測による凍結状態の判別

電解質水溶液を冷却すると共晶凝固が生じます.これが細胞の凍結障害の原因の一つと考えられています.一般に共晶凝固の発生は示差走査熱量計などにより明らかにすることができますが,インピーダンスの変化より簡便に検出することが可能なことを実証しました.この方法は,種々の物質の凍結状態を非破壊で調べることにも利用できると期待されます.

[主な研究発表]

  • 吉田敬介,安達健二,吉森崇志,内田悟,高松洋,インピーダンス計測による電解質水溶液の共晶凝固判別,日本冷凍空調学会論文集,25(2), pp. 219-224, 2008.


○単離細胞の圧迫変形損傷のバイオメカニクス

細胞懸濁液の凍結では,細胞が氷から未凍結水溶液中に排出され,氷結晶によって圧迫される様子を示す報告が発表されています.この実験結果は,氷による機械的ストレスが細胞損傷の一因であることを示唆しています.そこで,細胞が圧迫変形を受けた場合の変形の程度と生存率の関係について実験的に明らかにしました.

[主な研究発表]

  • H. Takamatsu, R. Takeya, S. Naito, H. Sumimoto, On the Mechanism of Cell Lysis by Deformation, Journal of Biomechanics, 38(1), pp. 117-124, 2005.
  • H. Takamatsu, N. Kumagae, Survival of Biological Cells Deformed in a Narrow Gap, Journal of Biomechanical Engineering, 124(6), pp. 780-783, 2002.
  • H. Takamatsu, B. Rubinsky, Viability of Deformed Cells, Cryobiology, 39(3), pp. 243-251, 1999.


○骨から考える長時間着座時の疲労

FigReseach_K3.jpg自動車や航空機のシートに長時間着座すると,体に大きな疲労が生じます.長時間着座に伴う疲労の中でも,運転者の多くは腰部疲労を経験します.これは体幹を支持している脊柱・骨盤の姿勢とそれらを取り巻く筋肉の緊張から生じるものです.このような腰部疲労を軽減するためには,脊柱・骨盤の位置や姿勢と関連づけながらシート座面・背面の形状寸法を最適化していく必要があります.そこでこの研究では,MRI(Magnetic resonance imaging; 核磁気共鳴画像法)や熱可塑性樹脂を用いて,着座時の脊柱・骨盤の位置や姿勢を非侵襲的に推定するための手法を開発しました.(写真は,CAD上で再構成した着座時の脊柱・骨盤)



○マイクロバブルを利用した高密度細胞培養装置の開発

FigReseach_K4.jpg直径50ミクロン以下の微小気泡として定義されるマイクロバブルは,気泡の持続性,均一性,分散性に優れるため,気体を効率よく液体に溶かし込むことができます.この研究では,細胞塊を三次元的かつ高密度に培養するための技術要素として,マイクロバブルを利用した新たな細胞培養装置の開発を行いました.(写真は,装置により発生させたマイクロバブル)

[主な研究発表]

  • K. Kurata, H. Taniguchi, T. Fukunaga, J. Matsuda, H. Higaki, Development of a compact microbubble generator and its usefulness for three-dimensional osteoblastic cell culture, Journal of Biomechanical Science and Engineering, 2(4), pp.166-177, 2007.