九州大学 機械工学部門 水素利用工学講座 水素利用プロセス研究室

所在地:
〒819-0395
福岡市西区元岡744
九州大学伊都キャンパス
ウエスト4号館6階(佐々木)

主幹教授 佐々木一成

研究内容

燃料電池を核にした水素エネルギー社会実現を目指して

 機械工学部門(水素エネルギーシステム専攻)・水素利用プロセス研究室では、燃料電池を核にした環境にやさしい水素エネルギー社会の実現を目指して、四半世紀にわたる研究実績をベースにした燃料電池および関連する水素システムの材料・プロセス研究に取り組んでいます。新材料の開発やメカニズム・プロセスの解明、システム設計指針の構築、水素技術の実用化に向けた高耐久化などの各種技術課題の解決を目指しています。そのために、材料調製から電池セルの作製、詳細な電気化学特性評価、ガス分析、微細構造観察、プロセスシミュレーションなどを一連の研究として行える体制を整え、研究室専有の燃料電池性能評価装置(計55台)や原子高分解能走査透過電子顕微鏡をはじめとする国内最高水準の研究インフラを駆使し、基礎材料研究から実用化に向けた産学連携や実証研究まで、積極的に取り組んでいます。

NEXT-FCパノラマ

当研究室が主導し、主要企業十数社が入居する
「次世代燃料電池産学連携研究センター」(建屋右半分)

研究室上から-集合写真2014

ウエスト4号館1階の当研究室・燃料電池実験室

(1) 固体酸化物形燃料電池(SOFC)の電極材料・プロセス研究

 多様な燃料種をフレキシブルに利用できる次世代型燃料電池の実用化を目指して、電池セルにおける反応プロセスや熱力学的安定性などを解明しながら、高性能で耐久性に優れる燃料電池の開発を行っています。SOFCの国家プロジェクト(NEDO)にも携わっており、長時間被毒耐久性に関する世界初のデータベース作成(平成17年度~)や、超高効率火力発電(トリプルコンバインドサイクル)システム用燃料電池の発電特性及び寿命の解明(平成24年度~)を目指しています。【佐々木、谷口、白鳥、立川、大尾、大嶋、永井、川畑、宮良、瓜生、谷口(理)、菅原ほか】

SOFC高耐久化に向けた取り組み。

SOFC高耐久化に向けた取り組み。
サイクル加速劣化後のSOFC燃料極の3次元電顕観察。
電極のNiが凝集して孤立(佐々木ほか)

(2) バイオエネルギーで発電する燃料電池に関する研究

 バイオマスのエネルギー利用に、内燃機関ではなく燃料電池を適用できれば、効率が高められ、環境負荷をさらに低減することが可能になります。当研究室では、平成19年度からバイオエネルギーで発電する燃料電池の研究に着手しており、有機性廃棄物から得られる実バイオガス(CH4とCO2の混合ガス)を固体酸化物形燃料電池(SOFC)に直接供給して長時間連続運転に成功しています。一方で、SOFCの可視化システムを開発し、発電中の温度分布を測定する等、熱機械的信頼性評価も行っています。【白鳥、Tran、坂本、内田ほか】

(左)電極支持型SOFCと、(右)炭化水素直接供給時の温度分布のその場測定結果(白鳥ほか

(左)電極支持型SOFCと、(右)炭化水素直接供給時の
温度分布のその場測定結果(白鳥ほか)

(3) メタルサポートSOFCセルの開発

 熱衝撃や燃料枯れ等に対する高いロバスト性を示すSOFCのセル実現を目指して、耐熱ステンレス鋼を支持体とするメタルサポートSOFCのセル材料・構造に関する研究開発を行っています。【谷口、朴、井上ほか】

金属支持体を用いた高出力SOFCの概念設計と試作(谷口ほか)

金属支持体を用いた高出力SOFCの概念設計と試作(谷口ほか)

(4) 固体高分子形燃料電池(PEFC)の次世代電極・プロセス研究

 高性能・高耐久性の新規PEFC電極触媒の開発や担体からの材料設計指針構築などの材料研究を行っています。カーボン腐食の問題を根本から解決する「カーボンフリー電極触媒」の開発などの成果を上げています。【林、Lyth、西原、野田、大尾、佐々木ほか】

メソポーラスカーボンを用いた新規のPEFC電極触媒(林ほか)

メソポーラスカーボンを用いた新規のPEFC電極触媒(林ほか)

カーボンフリーPEFC電極触媒(佐々木ほか)

カーボンフリーPEFC電極触媒(佐々木ほか)

(5) 燃料電池の原子レベル設計:基礎学理・先端評価手法の確立

 燃料電池などの水素利用システムに関連する「水素利用工学」を確立することを目指しています。原子・電子・分子レベルの欠陥化学や固体電気化学から、マクロな性能を左右する熱力学や物質輸送、電極プロセス、さらに電気化学測定評価法や顕微観察評価法、3次元微構造観察手法、加速試験法などの開発を進めています。特に、原子分解能の高分解能電子顕微鏡観察は、多岐にわたる燃料電池材料の研究にとって欠かせない手法となっています。原子レベルで燃料電池を設計・製作する時代がすぐそばまで来ています。【佐々木、大尾ほか】

酸化物担体を用いた高耐久性PEFC電極触媒の
原子分解能電顕写真(大尾ほか)

(6) 燃料電池の分子レベル設計:新規高分子電解質膜(PEM)の開発

 燃料電池の分子レベル設計を目指して、高温稼働形PEFC用PEMの開発を行っています。従来までの膜の作製法とは全くコンセプトが異なる電荷移動錯体高分子複合膜によるPEMの作製を行っています。これまで行われてきた精密合成によるPEMの機能化とは異なり、合成も簡単であり、さらに容易に機能の調整が可能であることが最大の特徴です。【西原、佐々木ほか】

電荷移動錯体高分子複合膜の概念図

電荷移動錯体高分子複合膜の概念図。
電子伝導性よりもプロトン伝導性が優先(西原ほか))

(7) 燃料電池の次世代システム設計:可視化手法の開発

 次世代の高性能な燃料電池開発に必要となる燃料電池内部の現象、反応、構造変化などの可視化技術の開発を行っています。通常観察できない温度の変化や化学反応,熱応力の分布を数値解析や実験的可視化手法に基づいた評価を行うことのほか、FCシステムをマクロに評価するシステム分析手法の開発も行っています。【立川、佐々木ほか】

(左)SOFC上の温度分布の数値解析結果と、(中)その際の熱応力分布、<br>
(右)実験で使用するSOFC可視化炉の概略図

(左)SOFC上の温度分布の数値解析結果と、(中)その際の熱応力分布、
(右)実験で使用するSOFC可視化炉の概略図(立川ほか)

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