高分解能イメージング

図1 投影型CTによる3D像(右:仮想断面像で表示)および同じ断面のSEM(走査型電子顕微鏡)の比較

 図1は、X線CTで撮像した後、試料を研磨し、左側の断層像と同じ位置をSEMにより観察したものである(解説論文2)。光学顕微鏡やSEM(走査型電子顕微鏡)による断面観察では、切断や研磨により試料が変質し、実際とは異なる結果が導かれる。3Dイメージングにより、特に熟練を要さずとも見誤りなく、的確に組織を理解できる。

図2 (a)投影型CTおよび(b)結像型CTの代表的セットアップ例

 図1に用いた投影型CTのセットアップは図2(a)に示され、その分解能は、可視光に対するレイリーの回折限界等によって規定され最高で1μm程度となる(論文2解説論文3,1)。一方、図2(b)は、フレネルゾーンプレートを用いた結像CTによるさらに高分解能な観察例である(論文2解説論文1,3)。Al-Ag合金中のγ-Ag2Al析出物が観察される。現在では、TEMよりはるかに大きな試料で最高100nmの空間分解能のイメージングが可能である。また、分解能以下の構造を可視化するため、X線吸収係数が異なる元素でミクロ構造を修飾する技法も用いている。

 

 

 

 

図3 結像型CTによるアルミニウム合金中の時効析出物の観察

 
 図3は、AC4CHアルミニウム鋳物材料のシリコン粒子と結晶粒界(ガリウムで修飾)を可視化した例である(解説論文2論文3)。用いた撮像系の分解能より3桁以上小さな幅しかない結晶粒界がきれいに可視化されている。

図4 AC4CHアルミニウム合金鋳物の結晶粒界(緑色)と共晶シリコン粒子(ピンク)の可視化

 図4はその応用例である(論文1解説論文2)。一般にミクロ組織に鈍感とされるParis域(疲労き裂進展のステージの一つ)のき裂進展でも、結晶方位によって破面がチルトし、破面の微妙な凹凸の形成や疲労破壊抵抗に大きな影響が生じることが明らかになった。

図5 2024アルミニウム合金の結晶粒界(黄色)と疲労き裂(緑)の相互作用

 ところで、X線CTでは分解能と視野サイズにトレードオフの関係が成立する(論文4解説論文2)。これを克服する関心領域構成法(大径試料内部の関心領域のみを高分解能で観察する手法)の開発も進めている。図5の例では、視野幅の4倍以上の大きな試料を用いている。

関連解説論文

  1. Y. Suzuki and H. Toda, Section 7.1, "Fresnel zone-plate microscopy and microtomography” in Chapter 7 "Tomography using magnifying optics", Advanced Tomographic Methods in Materials Research and Engineering, 2008, 181-201, Oxford University Press
  2. 戸田裕之,小林正和,鈴木芳生,竹内晃久,上杉健太朗,3D・4Dマテリアルサイエンス:その現状と展望,非破壊検査,Vol.58,No.10,2009,433-438
  3. 戸田裕之,小林正和,鈴木芳生,竹内晃久,上杉健太朗,X 線マイクロトモグラフィー,顕微鏡,Vol.44,No.3,2009,199-205
  4. 戸田裕之,佐藤眞直,奥田浩司,小林正和,放射光を用いた材料の観察と解析,軽金属,Vol.61, No.1, 2011

投稿論文

  1. K.H. Khor, H. Toda, J.-Y. Buffiere, W. Ludwig, H.S. Ubhi, P.J. Gregson and I. Sinclair, In-situ high resolution synchrotron X-ray tomography of crack closure micromechanisms, Journal of Physics: Condensed Matter, Vol. 16, 2004, S3511-S3515 (Journal of Physics: Condensed Matter TOP PAPERS 2004)
  2. H. Toda, K. Uesugi, A. Takeuchi, K. Minami, M. Kobayashi and T. Kobayashi, Three-dimensional observation of nanoscopic precipitates in an aluminium alloy by microtomography with Fresnel zone plate optics, Applied Physics Letters, Vol.89, Issue 14, 2006, 143112H.
  3. M. Kobayashi, H. Toda, K. Uesugi, T. Ohgaki, T. Kobayashi, Y. Takayama, B.-G. Ahn, Preferential penetration path of gallium into grain boundary in practical aluminium alloy, Philosophical Magazine, Vol. 86, No.28, 2006, 4351-4366
  4. L. Li, H. Toda, T. Ohgaki, M. Kobayashi, T. Kobayashi, K. Uesugi and Y. Suzuki, Wavelet-based local region-of-interest reconstruction for synchrotron radiation X-ray microtomography, Journal of Applied Physics, Vol.102, 2007, 114908-1-9