内部力学量4Dマッピング

図1 アルミニウム中の粒子やポアの個数。標準的なX線CTの撮像体積程度の領域に含まれる個数を示している

 X線CTでは、視野内に存在する分解能以上の全てのミクロ組織が可視化される。我々は、4D観察により全てのミクロ組織特徴点の物理的な変位を求めて内部力学量をマッピングすることを提案した(解説論文1)。これまでに、変位、歪、き裂進展駆動力(リンク)がマッピングされている。また、これと「高分解能イメージング」(リンク)の項で説明した結晶粒界可視化技術を組み合わせることで、材料内部の結晶粒変形挙動の4D追跡技術が実現されている(論文5,6)。ここでは、歪マッピングについて説明する。まず、可視化するミクロ組織特徴点の数が十分に多ければ、与えられた点群を使って重なりのない立体図形で空間を分割するDelaunay分割が適用できる。全頂点の変位が既知であるので、四面体とその内部歪も求めることができる。これは現在、不透明な材料内部で、歪などの力学量を高密度に計測する唯一の実験手法である。金属材料の場合、図1に示すように1mm3あたり数〜数十万個の特徴点が観察できるため、特徴点密度は充分である。

 

図2 ミクロ組織追跡法の概念図:加熱,塑性加工,外部負荷などのもとで,全ての粒子/ポアを追跡してその物理的変位を測定し,歪,応力,き裂進展駆動力などの力学量の3D/4D分布を求める

 
 重要なのは、図2に示すように、どのような外乱(負荷や高温など)下でも、膨大な数の特徴点を誤りなく追跡する4D画像解析技術である。我々は、特徴点の体積、表面積、重心位置を基にしたマッチングパラメータ(論文1)、特徴点凝集部のマッチングを解くばねモデル法(論文1)、前段階の変位を基にした軌道予測法、特定種類の特徴点により局所的な変位場を求めて軌道予測をする動径基底関数を用いた方法(論文3)など、多くの追跡手法を開発・適用してきた。

 

図3 マッチングパラメータ法およびバネモデルの概念図

 
 この概要を図3、図4に示す。現在では、ほぼ100%の特徴点を誤りなく追跡でき、高密度で高精度なマッピングが可能である。

図4 動径基底関数法による局所変位場計測の概念図

  

図5 Al-Mg合金の一軸圧縮下の内部歪み分布計測結果

  
 図5は、圧延中の金属材料の局所歪分布を初めて4Dマッピングした例である(論文3)。単純な一軸圧縮下でも局所的には非常に複雑な歪分布となっており、局部的には引っ張り(黄色部分)となることがわかる。これは、隣接結晶粒間の結晶方位のミスマッチングによる。また、ポアなどの局所的な消滅挙動も、局所歪分布により定量的に説明できる。

 

図6 X線CTによる4D相当ひずみの計測(左)とイメージベースシミュレーション(き裂形状のみ考慮)の同一断面での比較

 
 図6は、き裂材の一例である(論文2,4)。図中には、3D画像中のき裂形状を境界条件とするイメージベースシミュレーション(ミクロ組織無視)の計算結果も示した。単純なモードT負荷にもかかわらず、き裂先端の歪場は上下非対称であり(図6右)、粒子の不均一分布の影響を受けて非常に不均一である(図6左)。これは、破壊力学により予測されるものから大きくかけ離れている。

関連解説論文

  1. 戸田裕之,小林正和,鈴木芳生,竹内晃久,上杉健太朗,3D・4Dマテリアルサイエンス:その現状と展望,非破壊検査,Vol.58,No.10,2009,433-438
  2. 戸田裕之,佐藤眞直,奥田浩司,小林正和,放射光を用いた材料の観察と解析,軽金属,Vol.61, No.1, 2011

投稿論文

  1. M. Kobayashi, H. Toda, Y. Kawai, T. Ohgaki, K. Uesugi, D.S. Wilkinson, T. Kobayashi, Y. Aoki, M. Nakazawa, High-density three-dimensional mapping of internal strain by tracking microstructural features, Acta Materialia, Vol.56, Issue 10, 2008, 2167-2181
  2. L. Qian, H. Toda, K. Uesugi, M. Kobayashi and T. Kobayashi, Direct observation and image-based simulation of three-dimensional tortuous crack evolution inside opaque materials, Physical Review Letters, Vol.100, No.11, 2008, 115505
  3. H. Toda, K. Minami, K. Koyama, K. Ichitani, M. Kobayashi, K. Uesugi, Y. Suzuki, Healing behavior of preexisting hydrogen micropores, in aluminum alloys during plastic deformation, Acta Materialia, Vol.57, 2009, 4391-4403
  4. H. Zhang, H. Toda, P.C. Qu, Y. Sakaguchi, M. Kobayashi, K. Uesugi, Y. Suzuki, Three-dimensional fatigue crack growth behavior in an aluminum alloy investigated with in situ high-resolution synchrotron X-ray microtomography, Acta Materialia, Vol.57, No.11, 2009, 3287-3300
  5. H. Toda, Y. Okawa, M. Kobayashi, K. Uesugi and Y. Suzuki, Acta Materialia, to be submitted.
  6. H. Toda, D. LeClere, Y. Okawa, M. Kobayashi, K. Uesugi and Y. Suzuki, Acta Materialia, to be submitted.