高速CT観察

図1 Al-Cu合金中のき裂進展の連続画像。(a)では鈍化したき裂先端からのき裂発生が,(b)では進展き裂の先鋭化したき裂先端形状が明瞭に見られる

 X線CTは4D観察への発展性に大きなメリットがある。しかし、現実には一撮像あたり1〜10ks程度の時間がかかるため、これまでの4D観察は、全て負荷や恒温保持を一時中断して(負荷の場合には変位固定、恒温観察では室温への急冷)現象の進行を凍結した上で観察している(解説論文1)。これを、中断なしに高時間分解能で連続撮像できれば、その意義は大変大きい。図1と図2は、ESRFで白色X線を利用し、これに60frames/sの高速度カメラを組み合わせることで、22.5s/scanの高時間分解能でき裂進展挙動を連続観察した例である(論文1)。材料内部で進展き裂特有の先鋭化が観察された初めての例と言える。

 

図2 Al-Cu合金中のき裂進展の解析。左は,き裂の開口プロファイルを無次元化したもの。負荷の増加とともに進展き裂の形状に近付く事がわかる。右は,δとrを無次元化して両対数でプロットしたもの。やはり,静止き裂から進展き裂へ特異場の遷移が確認できる

 
 図2の解析(E:ヤング率、δ:き裂先端開口変位、σ0:流動応力、r:き裂先端からの距離)では、静止き裂のHRR特異場から進展き裂のRDS特異場へのゆっくりとした遷移が認められ、また高負荷ではき裂先端ではRDS、その前方ではHRRという遷移が認められる。

図3 現行/将来のX線CTの時間分解能と各分野における様々な動的現象

 ところで、真の4D観察を実現するには、上記よりさらに高速化し、3D画像1枚あたり1秒という超高速化が必要となる(図3)。これには、新しい発想のシンチレーター(X線⇒可視光の変換素子)創製が不可欠と考えている。電気化学や微細加工の研究者との連携により、ナノレベル微細構造化シンチレーターの形でこれを実現したい。

関連解説論文

  1. 戸田裕之,小林正和,鈴木芳生,竹内晃久,上杉健太朗,3D・4Dマテリアルサイエンス:その現状と展望,非破壊検査,Vol.58,No.10,2009,433-438
  2. 戸田裕之,佐藤眞直,奥田浩司,小林正和,放射光を用いた材料の観察と解析,軽金属,Vol.61, No.1, 2011

投稿論文

  1. H. Toda, E. Maire, S. Yamauchi, H. Tsuruta, T. Hiramatsu, M. Kobayashi, In situ observation of ductile fracture using X-ray tomography technique, Acta Materialia, Vo.59, No.5, 2011, 1995-2008.