はじめに

固体力学は機械構造物に生じる応力を正しく求める技術として発展してきました。この中から、有限要素法や境界要素法といった計算科学の根幹をなす技術が生まれてきました。九州大学でも西谷教授(九州大学名誉教授)を中心に体積力法と言う独創的手法を生み出しました。これらの技術は、現在応用期に入っており、多くの工業分野で日常的に使用されています。

我々固体の力学研究室では、次の世代の新しい技術を目指して、研究の再構築を始めました。我々の究極の目的は機械構造物を「安全」に作動させる事にあります。そのための基本的な評価モデルはStress-Strength Modelです。これまで固体力学はStress を求めることに勢力を注いできました。しかし、これと比較するStrength 側には多くの未解決な問題が残されています。そこで、 Strengthをよりミクロな力学の観点から実験・解析し、その結果を計算科学(コンピュータ解析)の手法につなげていく方向に研究をシフトしました。

一方、現在、世の中で起きている破壊事故を見ると、一つ一つの原因はそれ程難しくないが、それらがいくつか重なって起きており、一つの Stress-Strength Modelでは評価しきれない現象が起きているように思います。この様な状況をふまえて、従来のStress-Strength Modelよりも、さらに汎用化したリスク・ロバストモデルを構築し、機械構造物の故障を開発段階で未然に防止する手法につなげるための研究を行っています。

つまり、従来の固体の力学の枠を越えて、よりマクロな視点からミクロな視点までを包括的にカバーしながら、たとえば自動車のような現実の機械システムの故障問題を解決するための研究にシフトしました。

これらの研究を通して、学生の創造性を引き出し、将来、企業人として解決すべき重要な問題を見つけだし、創造的にその解決を図るべく、リーダーシップを発揮していくことが出来る人材の育成に努めています。

また、これらの研究成果を実際の製品開発に役立てるため、製品開発プロセスでの技術問題、及び、開発のマネジメント手法に踏み込んで議論し、問題解決を図る活動を行っています。