水素は化石燃料への依存度および大気汚染を軽減するための次世代エネルギーとして期待されています。燃料電池自動車と定置燃料電池システムは典型的な水素利用製品です。一方、水素は金属材料の中に侵入し、その機械的性質を低下させることいわゆる"水素ぜい性"を起こすことが知られています。我々は水素ガス中における疲労き裂伝ぱ速度を評価するために、疲労き裂伝ぱ挙動に及ぼす水素の影響の研究を行っています。評価を合理的にするためには、疲労き裂伝ぱ挙動に及ぼす水素の影響のメカニズムを明らかにする必要があります。そのために、我々は低圧の水素ガス雰囲気中で進展するき裂のその場観察を高倍率で行っています。
疲労き裂伝ぱ速度 | 進展中の疲労き裂 |
水素脆化において、Hydrogen-Enhanced Localized Plasticity (HELP)と呼ばれる塑性の局在化は重要な役割を担っている。HELP現象を有限要素法を用いてシミュレーションし、水素脆化機構の一端を定量的に明らかにします。
上述したHELPはミクロ(nm~μm)、メゾ(μm~mm)、マクロ(mm~)それぞれにおいてマルチスケールに様々なふるまいを見せます。本研究では、ミクロ〜マクロまで様々なスケールで水素を局所的に導入し、マルチスケールのHELP現象を人為的に再現し、各スケールのHELP現象の挙動を明らかにします。