2025年度JKA補助事業成果報告
(2025M-480)生体脂質膜の共振を利用した薬剤輸送技術の構築
補助事業者名:武石直樹・九州大学 大学院工学研究院 機械工学部門 生体機能工学研究室
1. 研究の概要
細胞や小胞などの内部流体が生体脂質膜で覆われた粒子(以降、カプセル)と周期的な振動場との相互作用を明らかにすることで、生体脂質膜の共振制御による新たな薬剤輸送戦略の実効性を検証する。独自構築した高速計算技術を駆使し、振動場としての背景流体と人工小胞としてのマイクロカプセル、そして赤血球との流体相互作用について数値シミュレーションする。
2. 研究の目的と背景
細胞や小胞に代表されるカプセルが管路内の振動流中で「どこ」を「どのように」安定して流れるのか、という物理は自明ではない。流動条件下でのマイクロスケールの粒子の追跡は実験的に困難を極めることから、現状、数値シミュレーションによる解析が有効とされている。定常流中でのカプセルの動態に関する報告例はあるものの、振動流中におけるカプセルの挙動は未だ明らかではない。背景流体によるカプセル界面の周期的変形と管路断面内のカプセルの時空間分布の解明は、生体脂質膜の共振制御による新たな薬剤輸送戦略において重要な知見とされる。そこで、本研究では、カプセルと血液の主要な細胞である赤血球との流体相互作用に着目し、微小血管内を想定した円管路内における振動流下でのカプセルの時空間分布を明らかにする。
3. 研究内容
(1) 脂質被膜カプセルの数理モデルの開発
はじめに、内部流体が生体脂質膜によって覆われたマイクロカプセルの数理モデルを構築した。主な生体脂質膜は、脂質分子が二重に連なった脂質二重膜を構成しており、厚さがわずか5 nm程度しかない。そこで、マイクロスケールである赤血球との流体相互作用を戦略的に解析するために、生体脂質膜の分子スケールの動態をボトムアップ的にモデル化した構成則を構築した。
(2) 微小血管内における脂質被膜カプセルの時空間分布に関する数値解析
構築したマイクロカプセルと赤血球との流体相互作用について数値解析する。独自構築したGPU計算技術を駆使し、微小血管内を想定した円管路内における振動流下でのマイクロカプセルの時空間分布を定量した。
4. 研究業績
(論文発表)
Diffuse interface approach to oxygen transport and metabolism under cellular flow dynamics in microcirculations.
Naoki Takeishi, Junya Kobayashi, Shigeo Wada, Satoshi Ii*.
Int. J. Heat Mass Transf. (2026), 266:128822.
Understanding how oxygen is delivered to tissues at the microscopic level (EurekAlert)
Press release (English)
Press release (Japanese)
(学会発表)
``時間非定常流れにおける単一・多体赤血球の管路断面局在化に関する数値解析"
濵田優樹,武石直樹,工藤奨.
日本流体力学会年会2025 (若手優秀講演表彰).