研究内容

BfELでは現在以下のテーマに沿って研究を進めています。

がん細胞および細胞内物質輸送に関するバイオメカニクス研究

がん細胞は再生が無限に繰り返され、異常増殖を示します。 近年、細胞内での物質移動とがんの薬剤耐性あるいは細胞死(アポトーシス)との関連が示唆されています。 本研究では、力学刺激と細胞内物質輸送の関係に着目し、細胞内タンパク質の移動・局在化過程をリアルタイムで計測します。 実験観察と力学モデル解析による相補的アプローチにより、力学と細胞内物質移動現象、そして疾患の関係を明らかにし、次世代の治療応用を目指しています。

細胞遊走に関するバイオメカニクス研究

細胞遊走は、がんの転移や組織・器官の発生の基礎となる現象です。 本研究では特に、細胞の方向性を持った移動(指向性遊走)のメカニズム解明に取り組んでいます。 異なる基質条件に対する(単一・多体)細胞挙動と細胞内タンパク質動態のクロストークを明らかにし、創傷治癒や組織形成の理解・再生医療への応用を目指しています。

細胞機能制御を目指した生体模倣材料の開発

細胞は周囲の力学特性に応答して代謝活動や増殖および分化状態を変化させます。 細胞の力場感知機構の解明に向け、物性制御可能な高分子ハイドロゲルによって、生体内組織を代替する新たな細胞培養基材を開発しています。 細胞外力学場の設計による、異種細胞の自発的局在化やガン細胞抑制などの細胞操作技術を確立し、癌治療や再生医療や人工臓器への応用を目指します。

微小循環系のバイオメカニクスに関する研究

微小循環系では慣性の影響はほとんどなく、ストークス流れが良い近似となります。 このような流れ場では、変形する球形粒子は管軸上に集中(軸集中)することが知られています。 既存の流体力学の知見に基づき、血球流動の詳細な相互作用を数値シミュレーションによって捉えることで、微小循環内の対流物質輸送に関わる様々な問題を明らかにしようとしています。

細胞分離・整列・検査に向けたカプセル流動に関する研究

マイクロ流体デバイスは、少量のサンプルから細胞を分離・選別するのに適していることから、採血した血液中から腫瘍循環細胞を検出することを可能にします。 次世代の細胞分離技術の開発や整列化機構の提案、そして細胞検査基盤の確立に向け、閉空間における変形粒子と流れ場の複雑な相互作用を明らかにしようとしています。

バイオレオロジーに関する研究

血液は、有形成分であの血球細胞が液体成分の血漿中に浮遊した懸濁液です。 ヒト血液の場合、血球細胞の占める体積割合は約45%で、その約98%以上が赤血球であることから、血液は赤血球の濃厚懸濁液とみなせます。 個々の赤血球の相互作用がどのようにしてマクロな血液の(レオロジー)特性を生み出すのかを明らかにし、物性の制御機構の確立に繋げようとしています。

細胞膜に関する数理モデル研究

細胞の内部流体と外部流体は厚さ方向に分子2個分 (~5nm)が並ぶナノ薄膜(脂質二重膜)によって隔てられています。 厚さ方向に顕在化する粒子性と面内の流動性を満足する特殊なマテリアルのダイナミクスはどのように数学的に記述されるのかを考え、数理モデル化と数値シミュレーション研究を行っています。 生体膜流動をはじめ、様々な生体内現象について、階層間のダイナミクスに着目した数理体系化を行っています。

高分子のダイナミクスと物性に関する研究

繊維状物質のダイナミクスは高分子の挙動を予測・制御する上での基礎的知見です。 血液中のタンパクを例に上げると、フィブリンと呼ばれる物質があり、これらの重合が止血や血栓形成過程において重要な役割を果たします。 本研究では、流れ場でのフィブリンの凝集過程や凝集塊としての物性創出を粗視化動力学的手法によって明らかにすることを目的としています。

医療支援を目指した医工学研究

臨床医との共同研究として、先天性気管狭窄症患者の気管内流動解析を行っています。 医療画像データを元に患者個別の気管モデルを作成し、数値解析によって気流の流れを観ることで、臨床医の手術の判断の支援や術後の予後の評価などに繋げる取り組みをしています。