研究活動

伊藤衡平 チーム

来る水素エネルギー社会のなかでは、低温型燃料電池と、水電解水素生成の二つの電気化学装置は重要な要素技術になると考えられます。これらの装置では、水素・酸素ガスが反応して水と電気が、あるいは水が電気分解して水素・酸素ガスが発生するプロセスが進行します。しかし少し誤ると、水やガスが詰まり、プロセスの進行を妨げ、性能を低下させます。従って、気液の挙動をよく理解しておくことが重要です。
 ここでは、自ら開発した計測・観察手法により、電気化学装置内部の気液挙動を把握し、数値解析とともに、現象理解に努めています。気液挙動の理解を基に、低温型燃料電池や水電解水素生成などの電気化学装置の性能向上を狙っています。加えて、高圧水電解に備え、水への水素の溶解を調べています。

北原辰巳 チーム

固体高分子形燃料電池(PEFC)の水管理性を高め、発電性能を向上させる方策として、マイクロポーラス層(MPL)を塗布したガス拡散層が一般に適用されています。しかし、その評価に関しては試行錯誤的にしか行われておらず不明な点が多いです。また、近年は、PEFCの総合効率向上,並びにコスト低減の方策として加湿器を設けない簡便なPEFCシステムの開発が重要な研究課題になっています。そこで、MPLの組成、細孔径、空隙率、厚さなどを変化させた拡散層を作製し、MPL付き拡散層の設計諸元が撥水性、親水性、ガス透過性,並びに水透過性などに及ぼす影響を明らかにする研究を行っています。そして、PEFCの低湿度(無加湿)条件下で耐ドライアップ性を向上させるための高性能ガス拡散層に関する設計指針を明らかにしようとしています。

中島裕典 チーム

運転状態の固体酸化物型燃料電池,電解セル(SOFC,SOEC),固体高分子型燃料電池,電解セル(PEFC,PEMWE),リチウムイオン電池に対して電気化学インピーダンス分光法(FRA法,FFT法)などのリアルタイム電気化学計測法を適用し,発電中,充放電中の電池各部の状態を示すパラメータを取得,解析しています.これを劣化診断や最適制御につなげ,性能,安全性,耐久性を向上させる研究を行っています.

 また,実測運転状態パラメータとCOMSOL Multiphysics等による数値計算の比較から,電池各部の発電,通電に伴う電圧降下(過電圧)を分離解析して出力ロスの要因を明らかにしつつ,電極,電解質における電圧降下およびエントロピー収支による熱収支を個別に考慮した熱解析を行っています.これにより,多孔質電極内の熱および物質輸送挙動や温度分布,発電分布を明らかにしながら数値モデルを構築し,燃料極支持ハニカム構造SOFCなどの新型流路や,高燃料利用率での運転を目指したスタック構造の提案,PEFC・リチウムイオン電池多孔質電極作製法の提案,並びに電池材料評価法,電池最適制御法を得る研究を行っています.これらの知見や手法を地上用だけでなく,電動航空機推進用燃料電池や宇宙用新型水電解セルの設計に展開しています.

キーワード:発電分布,温度分布,電池構造,多孔質電極,電池材料評価,電気化学インピーダンス分光法,FFT法,三次元シミュレーション

 


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