流体制御研究室

研究内容

生活を支える流体機械(ポンプや水車)とその内部の流れ(特にキャビテーション)に関する研究
  1. 流体機械の高効率化・高信頼化に関する研究
  2. 流体機械内で発生するキャビテーションの研究
  3. キャビテーションの現象解明に向けた研究
  4. その他(終了または現在休止中の研究)

流体機械の高効率化・高信頼化に関する研究

小水力利用Gr.

―小水力エネルギーを利用した小形水車の高出力化とその利用―

エネルギー問題や環境問題に対する解決策の一つとして,再生可能エネルギーの積極的利用が進められています. 再生可能エネルギーの一つである水力,特にエネルギー換算で100kW以下のマイクロ・ナノ水力は,賦存量が多く環境への影響が小さいため,今後のエネルギー利用が期待されています. 本研究グループでは,マイクロ・ナノ水力の利用に適していると考えられる,垂直軸水車であるダリウス形とサボニウス形の二種類の水車について,開水路に設置された場合を想定した研究に取り組んでいます. ダリウス形については,水車の設置位置による性能を評価するとともに,水車に水を導くための案内板(ガイド)を水車上流に設置することで,その出力向上を目指しています. またサボニウス形については,開水路特有の流れである自由表面と水車との距離が水車出力に与える影響を明らかにすることを目的として,研究を進めています.
darr   savo  
ダリウス形水車   サボニウス形水車  

多段遠心ポンプGr.

―多段遠心ポンプ内部の流動状態と流体力との関係の解明―

複数の羽根車の直列配置により高い吐出圧を得られる多段遠心ポンプは,発電プラントや各種産業プラントなどにおいて幅広い用途に用いられており,社会基盤を支える重要なターボ機械です.ポンプ内部の羽根車をはじめとする回転体には流体の圧力による力(流体力)が作用しますが,とくに多段遠心ポンプの内部は非常に高圧でかつ流れが複雑であるため,軸振動や軸受の破損などさまざまな問題が懸念されています.本研究では,多段遠心ポンプの軸系に作用する流体力や各部の圧力を同時計測するとともに,CFD(Computational Fluid Dynamics, 数値流体力学)解析を利用してポンプ内部の流動状態,ひいては軸系に作用する流体力の発生メカニズムを解明することを目的としています.
多段1 多段2 多段3
   多段遠心ポンプの実験およびCFD   

流体機械内で発生するキャビテーションの研究

インデューサGr.

―インデューサのキャビテーション不安定現象の解明およびその抑制―

汎用のターボポンプの小形・高速化にはキャビテーション対策が欠かせません. その有効な手段の一つにインデューサの設置があり,これまで,限られた流量範囲で運転されるロケットエンジン用のターボポンプを対象に,多くの研究が行われてきています. 一方,本研究グループでは,締切点を含む幅広い流量範囲で運転される,汎用のターボポンプインデューサを対象に, 特に低流量域で生じるキャビテーション不安定現象に着目して,その発生過程の解明を行うとともに,不安定現象の抑制手法を確立することを目的としています.
インデューサ1   インデューサ2
インデューサ   キャビテーションの様相

キャビテーションの現象解明に向けた研究

キャビテーションGr.&キャビテーションCFD Gr.

―Clark Y-11.7%単独翼周りのキャビテーションの非定常現象の実験的解明&CFDによる流れ場予測の精度向上―

ターボポンプの羽根や水中翼などに代表される翼周りの流れ場では,翼面上や翼端などでキャビテーションが発生します. 本研究グループでは,Clark Y-11.7%単独翼周りのキャビテーションの初生,成長および非定常現象を解明するとともに,その予測の高精度化を目指し,実験および数値流体解析(CFD)を行っています. 実験では,水中の溶存気体量や気泡核の数密度,表面粗さの影響に着目して,キャビテーションの様相の観察に加え,翼に作用する揚抗力や圧力分布の同時計測を行っています. また,CFDによる研究では,キャビテーションの各素過程(気泡の初生/崩壊・膨張/収縮・蒸発/凝縮・溶存気体の拡散/析出など)のモデルの高度化ならびに検証を多角的に行うとともに, 世界最高水準のスーパーコンピュータである「富岳」の利用を見据えた研究の準備も進めています.
キャビ1  キャビ2
キャビ3
Clark Y-11.7%翼周りのキャビテーションの実験およびCFD

熱・ガスキャビテーションGr.

―キャビテーションに非凝縮性気体が及ぼす影響に関する研究―

キャビテーションにおいては液体の蒸発だけでなく溶存気体の析出や気泡核の膨張が生じるため,考慮すべき要素が非常に多く,定量的かつ普遍的な予測手法が確立されていないのが現状です. 私たちは,液中の溶存気体の挙動がキャビテーションに及ぼす影響を定量的に明らかにすることを目標として,二次元拡大縮小流路内の流速や液中の溶存気体量がキャビテーションの発生ならびにキャビテーション気泡内の圧力に及ぼす影響を実験的に調べています. なお,過去にはキャビテーションの熱力学的効果(蒸発に伴う温度変化の影響)についても研究を行っておりました.
熱キャビ1 
熱キャビ2
熱キャビ3
熱キャビ4
二次元縮小拡大流路および流路内に発生するキャビテーションの様相

ミクロキャビテーションGr.

―気泡核の形成過程ならびに気液界面における蒸発過程に関する研究―

水中におけるキャビテーション気泡は,気泡核と呼ばれる1~100マイクロメートルのオーダーの微小な気泡が急激に膨張することで発生すると考えられています. しかしながら,そもそも気泡核がどのようにして形成されているのかについては,未だによくわかっておりません. 本研究では,このような気泡核の形成過程について,分子動力学法と呼ばれる個々の分子運動を直接解くミクロなシミュレーション手法や理論的アプローチに基づいて,研究を進めています. また,水だけでなく,液体水素中における気泡核の形成過程についても,水素分子に特有の物理的性質(量子力学的性質)を考慮できる分子シミュレーション手法を用いて,数値的検討を進めています. 加えて,連続体力学の観点では正確な評価が難しい,水素の気液界面からの蒸発速度(蒸発流束)の評価も実施しており,液体水素の貯蔵効率などを検討するうえで有用な微視的知見の提供なども目指しています.
ミクロ1
気泡核の形成過程を模擬した分子動力学シミュレーション

ミクロ2
液体水素の気液界面からの蒸発過程を模擬した量子分子動力学シミュレーション

その他(終了または現在休止中の研究)

二重反転形ポンプGr.

―二重反転形軸流ポンプの不安定現象,損失メカニズムの解明および最適化―

近年,環境保護および省エネ,省資源化のため,ポンプはより高い性能と小形化が要求されています. 高比速度軸流ポンプに二重反転形翼車を適用することにより,ポンプの小形化および良好なキャビテーション性能の双方を達成することが期待されます. 本研究では,二重反転形軸流ポンプの実験および数値流体解析(CFD)により,性能評価および内部流れ場における損失発生の分析,不安定流動の解明を行うとともに,前後段翼車の最適回転数制御を駆使した,高性能の二重反転形軸流ポンプの開発を行っています.
二重1   二重2
二重反転形翼車   逆流渦

トルクコンバータGr.

―自動車用トルクコンバータにおけるキャビテーション現象の解明―

自動車用トルクコンバータは,エンジンの動力を伝達する装置であり,停止時・巡行時から加減速時に至るまで非常に広範囲での運転が必要とされます. したがってキャビテーションの発生が懸念されており,これを確実に抑制するため,常に内圧が付与された状態で運転されています. 本研究では,自動車用トルクコンバータの可視化モデルを用いた直接観察,気泡発生・崩壊時の騒音計測,数値流体解析(CFD)を実施し, 相変化に伴う蒸気性キャビテーションと溶存空気の析出による気体性キャビテーションの関係性の解明,および実機での予測法の確立に向けたキャビテーションモデルの構築を目指しています.
トルコン1   トルコン2   トルコン3
トルクコンバータの実験およびCFD