元素濃度マッピング

図1 吸収端のプロセス(上)。Al-5Cu合金のas-cast材および溶体化処理材の銅の3D濃度マッピングの結果(左下)。熱処理後では,一見均質な銅分布に見えるが,右下のように,局所的には銅濃度が大きく変化している

 単色X線CTを用いれば、二元系合金では元素濃度の3D分布を求めることが出来る(解説論文1)。しかし、三成分以上の材料では不可能である。これまで、吸収端を挟んだ両側で透過像を撮像し、それらの差分をとることで特定元素のみを選択的に強調する手法が高コントラスト撮像法として、医療分野で活用されてきた。この画素差分を画像の位置合わせおよび画素値の補正に関して精密に行えば、元素濃度3D/4Dマッピングが可能になる(解説論文2)。原理的には、SPring-8で単色光が得られるエネルギー範囲に吸収端を持つFe(原子番号26)〜Bi(同83)までの元素に適用できる。この手法により、SEM-EDXと同程度の検出能、再現性が担保され(論文1)、ミクロ組織の空間的な不均一性およびその破壊への影響評価などに活用されている(論文2,3解説論文3)。

図2 吸収端差分イメージングによるAl-10Zn-1.5Ca-1.5Ti-1.0Mg発泡材料中のZn濃度分布可視化。破壊過程を4D観察することで,破壊経路とZn濃化部の関係が明瞭に示されている

 図1には、一例としてAl-Cu合金中のCu濃度分布を示す(論文1)。かなり高い温度で充分に長い時間均質化処理を行った結果、Cu濃度はかなり均質になったように見える。しかし、10個の球状領域をサンプリングして評価すると、それぞれの領域でCu濃度の平均値や分布は大きく異なることがわかる。図2は、ポーラス材料の亜鉛偏析と破壊時のき裂進展経路の関係を示す(論文2)。図1でも見たような合金元素濃度の局所的なゆらぎが破壊を支配している様子が明らかである。また、共晶融解が生じるような極限的に高い温度での溶体化処理の正負の効果に関し、脆性な共晶融解部の優先的な破壊がこの手法により可視化されている(論文3)。

関連解説論文

  1. 戸田裕之,小林正和,鈴木芳生,竹内晃久,上杉健太朗,X 線マイクロトモグラフィー,顕微鏡,Vol.44,No.3,2009,199-205
  2. 戸田裕之,小林正和,鈴木芳生,竹内晃久,上杉健太朗,3D・4Dマテリアルサイエンス:その現状と展望,非破壊検査,Vol.58,No.10,2009,433-438
  3. 戸田裕之、小林正和,X 線マイクロトモグラフィーによるポーラス金属の破壊挙動解析,まてりあ,Vol.47,No.4,2008,191-195
  4. 戸田裕之,佐藤眞直,奥田浩司,小林正和,放射光を用いた材料の観察と解析,軽金属,Vol.61, No.1, 2011

投稿論文

  1. H. Toda, K. Shimizu, K. Uesugi, Y. Suzuki and M. Kobayashi, Application of dual-energy K-edge subtraction imaging to assessment of heat treatments in Al-Cu Alloys, Materials Transactions, Vol. 51, No.11, 2010, 2045-2048
  2. Q. Zhang, H. Toda, Y. Takami, Y. Suzuki, K. Uesugi, M. Kobayashi, Assessment of 3D inhomogeneous microstructure of highly alloyed aluminium foam via dual energy K-edge subtraction imaging, Philosophical Magazine, Vol.90, No.14, 2010, 1853-1871
  3. H. Toda, T. Nishimura, K. Uesugi, Y. Suzuki, M. Kobayash, Influence of high-temperature solution treatments on mechanical properties of an Al-Si-Cu aluminum alloy, Acta Materialia, Vol.58, 2010, 2014-2025